・水族館飼育員の仕事や必要な資格について知りたい人
・水族館関連の仕事を知りたい人
水族館は子供から大人まで楽しめ、癒しを感じられる場所です。
のびのびと水槽内を泳ぐ魚たちや、さまざまなパフォーマンスを見せてくれる海洋生物たちの健康を守り、飼育全般を担うのが水族館飼育員です。
そんな水族館飼育員の具体的な仕事内容や、必要な資格についてみていきましょう。
水族館飼育員の仕事内容・資格
水族館飼育員の仕事内容とは?
水族館飼育員とは、水族館で展示されている魚類・海獣類を中心とする水生生物の世話・健康管理・環境整備など飼育に関わる業務全般を行う仕事です。
水生生物の世話、健康管理
・調餌…それぞれの食性に合ったものを準備し、小さく切ったり個体に合わせて計量する
・給餌…水槽内の多くの生物に満遍なく行き渡るように餌を与え、食いつきや動きをチェックし、健康状態を見る
・健康管理…食欲や動き、排泄物のチェックをし、病気の兆候のある個体がいないか、産卵行動に異常はないかをよく観察して必要あれば隔離、獣医師による診察を受ける
また多くの水族館では、魚類と海獣類で担当が分かれています。
同じ魚類でも、種類によって飼育方法や生育環境が異なるため、水槽ごとに担当があり、それぞれの専門分野に分かれて仕事しています。
ショー業務
・イルカなどショーに出演する動物のトレーニングを行う
・ショーの企画、演出、出演をする
接客
・来園者へのガイドをして生き物の生態を解説したり、魅力を伝える
・給餌のパフォーマンスをする
・季節ごとにイベントを企画する
・遠足などで来園した子どもたちに環境教育を行う
研究
・専門となる水性生物の生態を観察し、日々飼育記録をつけ、研究・発表を行う
・水辺にいって水生動物を採集する
このように水族館飼育員は、水生生物の世話だけでなく裏方作業があったり、人前に出ることも多かったりと幅広い仕事があります。
水族館飼育員に資格は必要?
水族館には公営と民営があり、公営の水族館の水族館飼育員は公務員となるため地方公務員試験に合格する必要があります。
民営の水族館に関しては、水族館飼育員になるために必須の資格は特にありません。
しかし専門性の高い仕事なので、取得しておくと就職に有利であったり、業務する上で役立つ資格はあります。
また水族館によっては求人の際に応募条件として資格を求められることがあるので、資格の取得はできるだけしておいたほうが良いでしょう。
潜水士
潜水を伴う作業をする仕事では取得しなければならない資格です。
国家資格で、18歳以上であれば誰でも受験できます。
マークシート式の学科試験のみで、合格率は70%前後となっています。
水族館では、ショーで潜水したり水中での餌付けをしたり、水槽内の清掃の時にも潜水作業が必要になるため、取得しておいたほうが良いでしょう。
スキューバダイビングライセンス(Cカード)
民間のダイビング団体の講習を受けるとこで認定・証明される認定証です。
全国統一基準がないため、ダイビング団体によって取得に必要な日数や金額は異なります。
一般的にはプールでの講習、学科、2回の海洋実習が行われます。
獣医師
6年制の大学獣医学部に通い、獣医師国家試験に合格することが必要です。
非常に難易度は高いですが、幅広く深い知識を身につけられ、水族館で水生生物が病気になった時にすぐに治療にあたったりと活躍できる場面が多く、就職する上でも大変有利な資格です。
学芸員
資料の収集や保管、展示などを担当する専門職員をするための資格です。
国家資格であり、
・学士の学位を有し、大学で文部科学省の定める博物館に関する科目の単位を修得する
・大学に2年以上在学し、博物館に関する科目の単位を含めて62単位以上を修得し. 、3年以上学芸員補の職につく
・学芸員資格認定に合格する
の、いずれかに該当すれば取得できます。
来園者へ水生生物の生態や魅力を伝えたり、見せ方を工夫したりします。
ただし学芸員として採用された場合は飼育には携われず、学芸員の仕事となるので注意しましょう。
普通自動車免許
水族館によっては応募条件になっていることもあるので取得しておいたほうがよいでしょう。
できればATではなくMTで取っておいたほうが選択肢が増えるのでおすすめです。
また、就職して実務を経験した後に取得できる、「飼育技師資格」という資格があります。
これは日本動物園水族館協会が運営管理している資格で、仕事に従事する人の資質向上を目的として作られています。
動物飼育技師と水族飼育技師とで資格が分かれており、日本動物園水族館協会に加盟している施設で2年以上実務経験がある人が受験できます。
学科のみで合格率90%前後です。
転職の際に有利になる資格なので、就職後に取得を目指すのもよいでしょう。
水族館飼育員になるには?
水族館飼育員になるには、高校卒業後、大学・専門学校で学び就職する流れが一般的です。
大学
大学では、座学を中心として専門的な知識を深く学び、研究することができます。
水産学部・海洋学部・獣医学部など、興味のある分野を学べ、専門性の高さは就職活動時の強みとなるでしょう。
専門学校
専門学校には学校により様々な分野があります。
水族館飼育員になると決めているのであれば海洋系に特化した専門学校を視野に入れて探してみましょう。
専門学校の特徴は実習の多さで、即戦力となるような実践的な知識・技術を身につけられたり、インターン先が豊富なことがメリットです。
就職活動としては、大学・専門学校に来る求人に応募することが一般的ですが、研修に行った先で誘われたり、自ら希望の水族館に問い合わせするケースもあります。
ただ水族館そのものの数が少ないため求人数が少なく、必ずしも自分の卒業時期や就職活動時期に求人が出るとは限りません。
新規で水族館がオープンする場合は多数の求人が出ることもありますが、基本的には欠員が出た時に補充する形なので、情報収集をこまめに行い、応募のタイミングを逃さないことが大切です。
水族館飼育員の給料は?
水族館飼育員の全国平均年収は344.1万円です。
月収にすると大体21万円前後のところが多いようです。
地域や水族館の規模により差はありますが、全体的に全国平均より低い水準になっています。
また土日祝日や夏休みなど、世間がお休みの時期に忙しくなる職種であり、生き物相手なので、担当している生物に問題があった場合、残業したり泊まり込みになるケースもあります。
給料の高さや待遇の良さよりも、自分の好きなことを仕事にしたい人や、やりがいを求めて働いている人が多いようです。
(出典:厚生労働省 jobtag https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/224)
水族館飼育員のやりがい・大変なことは?
やりがい
・生き物相手の仕事なので、毎日違う発見があり、いつでも新鮮な気持ちで仕事ができる
・来園者が水生動物を見て喜んでくれたり、感動している様子をそばで見て実感できる
・環境教育に携われ、自然環境保護の一端を担える
・常に生き物に囲まれて仕事ができる
大変なこと
・力仕事が多く、体力が必要
・いわゆる4K(きつい・汚い・危険・臭い)と呼ばれる仕事である
・冬でも水に触れたり水中に潜ったりするので寒さとの戦い
・生き物の病気や死が身近にあり、常に命と向き合い続ける
・平均よりも給料の水準が低い
・世間が休みの時に忙しい
このように生き物が好きな気持ちだけでは続かないような、大変なことの多い仕事です。
また人前で発表する機会が多かったり、他のスタッフと情報を共有し連携することが必須であったりと、プレゼン力やコミュニケーション能力が必要です。
生き物が好きなことは大前提で、さらに
・根気強く生き物と対峙する忍耐力がある人
・好奇心旺盛な人、探究心のある人
・体力に自信がある人
に向いている仕事といえるでしょう。
水族館飼育員の仕事は、必須の資格はありません。
しかし高い専門性が求められ、知識や技術が必要な仕事です。
給料が低めで、土日祝日など世間が休みの時にも出勤するなど決して待遇が良いとはいえませんが、自分の仕事に誇りを持って働いている人が多いです。
水族館飼育員は、生き物を常に近くに感じられ、人との関わり合いも楽しみながら働けるやりがいのある魅力的な仕事といえるでしょう。