・動物飼育員の1日のスケジュールについて知りたい人
・動物園などで働きたい人
子供から大人まで楽しめる動物園や水族館、サファリパークなどの動物関連施設で、動物と一番近い距離で接しているのが動物飼育員です。
動物飼育員が動物に餌をあげたり、触れ合う様子を羨ましく思う方も多いでしょう。
動物飼育員とは一体どのような仕事内容なのか、1日をどんなスケジュールで過ごしているのかを見ていきましょう。
動物飼育員の仕事内容と1日のスケジュール
動物飼育員の仕事内容
動物飼育員は、動物園や水族館、サファリパークなど動物を飼育している施設において動物の世話・健康管理を行い動物が快適に過ごせるように環境を整えるのが主な仕事です。
施設は動物が本来暮らしている環境とは違うため、できるだけ動物に負担をかけずに健康に過ごせるよう工夫しながら世話をします。
具体的な仕事内容としては
・動物の世話、健康管理、清掃
・レクリエーション…イベントやショーの企画、トレーニング、出演、動物を身近な存在に感じてもらうよう、ふれあいや餌やり体験を楽しんでもらう
・調査・研究…動物の生態や繁殖などのデータ収集
・環境教育…動物の生態や、動物の生息地の環境を解説し理解してもらう
・種の保存…絶滅を危惧される希少種をはじめ、さまざまな動物の繁殖に取り組み保護をする
などがあります。
特に近年、動物園の役割として環境教育と種の保存は大きなテーマとなっています。
環境教育に関しては、野生動物の保護や環境保全活動を目的とし、多くの動物が絶滅の危機に瀕していることを理解してもらう必要があります。
以前は動物園でも、野生動物を捕獲してきて展示することが一般的でした。
しかし現在は野生動物保護の観点から、施設内で繁殖し数を増やす努力をしています。
地球の環境を守り、持続可能な社会を作るため、来園者にも環境保全の意識を持ってもらえるようわかりやすく解説していくことが大切です。
また種の保存に関しては、IUCN(国際自然保護連合)が発行しているレッドリストによると、現在世界に生息している哺乳類の約20%、鳥類の約10%が希少動物に分類されています。
希少動物とは生息数が非常に少なく、絶滅の恐れがある野生動物のことです。
一度絶滅した種は2度と戻ることはできませんが、環境破壊や世界的な気候変動により、近年動物が絶滅するスピードがさらに加速していると言われています。
そのような希少動物動物を守るため、動物園での種の保存を積極的に行っています。
一例としては、トキやコウノトリのように一時は日本の自然界ではいなくなってしまった野生生物を、飼育下で繁殖させて数を増やし、一定の個体数を維持できるようになったら野生に返す取り組みをし生息数を増やしました。
来園者に、さまざまな動物の姿を見て楽しんでもらうのが一番の目的ですが、野生動物の保護や環境保全について考えるきっかけを作ることも動物飼育員の大切な仕事の一つです。
動物飼育員の1日のスケジュール
動物園の飼育員の1日
動物園によって営業時間や内容は異なりますが、ここでは9:00開園ー17:00閉園の動物園を例に紹介します。
・7:30 出勤 担当している動物の健康チェック、清掃、餌の準備、餌やり
・9:00 開園 動物を園舎から展示室へ移動、園舎の清掃
・11:00餌やり 来園者の前で餌やりパフォーマンスをすることもある
・12:00昼休憩 他のスタッフと交代で休憩をとる
・13:00来園者対応 来園者に動物の生態を解説したり、個体別に紹介したりとガイドを行う
・15:00デスクワーク イベントの企画会議や展示物の制作、書類作成
・17:00 閉園 動物を園舎に戻し、展示室を清掃する
・17:30ミーティング その日の動物の状態を共有し、引き継ぎを行い飼育記録をつける
日によって内容は変わりますが、基本的には8:30〜17:30勤務で1時間ほどの昼休憩があるケースが多いようです。
ただ生き物相手の仕事なので、動物が体調不良の時や出産を控えている場合は残業したり、交代で泊まり込みをして世話や観察をすることもあります。
1日の中で、餌の準備と清掃は重労働な仕事です。
餌は肉や魚、野菜を切り、動物に合わせて分量を分けて準備します。
メニューが一頭ずつ違う動物もおり、高齢だったり体の弱っている個体には細かく刻んで与えるなど配慮をします。
例えばライオンだと、1頭で1日に4−5kgの肉を食べるため、その準備だけでも時間がかかります。
食べた量や食いつき具合、便や尿の状態、被毛のツヤなどチェックし、気になることがあれば獣医師に相談します。
また展示室や園舎の清掃も力のいる仕事です。
カバなどの水生生物は水中で排泄するため水の入れ替えが必要ですし、ワラの上で寝る習性の動物の場合は、ワラを定期的に交換し敷き直す必要があります。
屋外での作業や水仕事が多いため、季節によってはさらに過酷でしょう。
しかし動物の環境を整え衛生的に保つことは、病気を防ぐ面でとても重要な仕事です。
温度管理にも気を配り、動物のストレスを減らし快適に過ごせるよう気を配りましょう。
また飼育している動物は全て展示場に出すわけではなく、一頭一頭の状態を見て、どのようなメンバーで展示するかを考え、組み合わせを頻繁に変えながら出しています。
他の動物飼育員と相談しながら、どの個体を展示するか計画を立てていきます。
動物園で飼育される動物は、可愛いだけで世話ができるものではありません。
ライオンやトラなどの猛獣と呼ばれる大型で獰猛な動物の場合は危険と隣り合わせであったり、象のように数トンの重量のある動物では踏まれたり蹴られるだけでも大怪我をする場合があります。
専門知識をしっかり身につけ、動物と接するときは常に心が落ち着ついた状態で、マニュアルを守って世話をする必要があります。
それでも生き物相手なので予想外の動きをしたり、その日によって機嫌が悪かったりと想定外の場面に出くわすこともあります。
さまざまなケースを他の飼育員と想定・共有しながら、臨機応変に対応する力が求められます。
また基本的に飼育員は数年単位で担当する動物が変わることが多いですが、象やチンパンジーなどは人間と信頼関係を築くのに時間がかかるため、担当する人が長期間同じ人になることが多いようです。
水族館の飼育員の1日
水族館では魚類を担当する飼育員と、イルカやラッコなど海獣類を担当する飼育員がいます。
ここでは海獣類の飼育員の一日を紹介していきます。
こちらも水族館によって営業時間は異なりますが、10:00開園ー18:00閉園の水族館を例に見ていきましょう。
8:00出勤 動物の状態をチェック、餌やり、スタッフとミーティング
9:00清掃 水槽や館内の清掃を行い開園に備える
10:00開園 ショーを行ったり、トレーニンングをする
12:00昼休憩 スタッフが交代で休憩をとる
13:00ショーや清掃 ショーを行ったり、バックヤードの予備の水槽の清掃や水の入れ替え、濾過装置の確認を行う
16:00餌やり 動物ごとに餌を準備し、餌を与える
18:00閉館 動物の健康状態など他のスタッフと共有し、飼育記録をつける
基本的には動物園の飼育員と大きな差はありませんが、水族館では水の中で暮らす動物を飼育するため水質の管理は大切な仕事です。
水槽の清掃をこまめに行い、動物が快適に過ごせる環境を維持できるように心がけましょう。
健康チェックにおいて、便は動物の体内の状態を知るために大切な資料です。色や臭い、量を毎日チェックし異変がないか観察します。
水族館の飼育員ではショーも大事な仕事の一つで、来園者に楽しい時間を過ごしてもらい、動物に興味を持ってもらうため企画や演出を工夫します。
ショーのためのトレーニングには長い時間が必要ですが、動物との信頼関係を築き、コミュニケーションを取りながら技を習得させていきます。
日によってショーの回数は変わりますが、土日祝日やゴールデンウィーク、夏休みなど来園者が多くなる時期には、ショーの回数を増やすことがあります。
動物飼育員は動物と一番近くで接することができる仕事です。
しかしその仕事内容は、危険と隣り合わせであったり、体力が必要な重労働であったりと楽しいだけでできるものではありません。動物の病気や死と向き合う場面も必ず出てきます。排泄物を処理することも多く、いわゆる4K(きつい、汚い、危険、臭い)と言われる仕事です。
一般の人が休みの時に忙しいため、休みが合いにくいというデメリットもあります。
ただ、世話をしていくうちに動物が自分を認識するようになり、コミュニケーションをとれたり、病気から回復したり、出産に立ち会えたりと大きな喜びややりがいを感じられる瞬間が多くあります。
また環境保全や絶滅に瀕した動物を守るという大きな使命のある仕事でもあります。
普通の人ではなかなかできない経験ができ、動物のために役立てる魅力的な動物飼育員を目指してみてはいかがでしょうか。